黒蛇学生珍道中

じゃがいもに心奪われた飲兵衛大学生の日常+料理日記

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僕は大丈夫だと言ってほしい

部活の馬が一頭、最後通告をされた。
競走馬時代からの軟腫を5年以上抱えて学生と付き合ってきた馬で、自分にとっては初めての大会を無事に還らせてくれた師匠にあたる馬だった。
腫瘍の圧迫からか中の組織と皮膚が癒着して突っ張っているらしい。
それが不快で乗られると更に不快だから人を落とす、おまけにこれに後肢がついてこなくなった日には人馬転してどっちもお陀仏と来た。
コンスタントに大会還ってこれるのはこいつしかいないとか、今新馬を入れたところでどうにもならないとか考えないといけないことが増えすぎた。
去年の時点で既に勧告はされていた、一年引き摺ってこれただけでも十分なのかもしれない。

「軟腫は何頭も見たが、癒着は初めてだ」

監督の何気ない言葉が重かった。
それはつまりそこまで悪化する前に治療するかクラブから出すかということに他ならない。
素人は殺すのは可哀想だと思い、何とかして生かしてやりたいと思う。
だが玄人は治らない爆弾を抱えているのを承知で酷使することが可哀想だという。
間違ってはいない、けれどどうもしてやれない。
危険を承知で使い続けるべきか、僅かな生き延びる可能性に賭けてクラブを転々とさせるか。
あるいは…。



それでも、だとしても一番心配なのは自分が好きな馬のこと。
巨躯に似合わぬビビりでへたれで懐っこくて優しい子。
顔を見ると寄ってきて甘えてくれるようになった。
素直だから新入生が入ったらこれから嫌でも酷使しないといけない。

我が儘だけどこの子だけは潰したくない。
他の4頭全部潰してでも守りたい。
こういう愛情の偏り方をしてるからツンデレ師匠はいまだにデレてくれないのか…(苦笑)?
それでも一番好き、大好き。
だから痛みにも素直であってほしい。
ほんの些細な違和感でもいいから、辛かったら苦しがってほしい。
いい子だから無理して頑張ってくれそうで怖い。
頑張らなくていい、跳べなくていい。
だから元気でいてほしい。

頭を撫でて、潰れないでくれと言ってみた。
摺り寄ってきた彼は、頑張るねと言ってくれた気がした。

頑張ろう。
憂うことなくこの子と最期まで居ると決めた。
技術で誰に劣っても、大好きな気持ちだけは負けるつもりはない。
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  1. 2010/03/26(金) 07:46:31|
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